経営者インタビュー

従業員が全面的に関与し、一丸となって会社を発展させていく ~ネパールのセメント製造販売会社役員に聞く ネパール

2016年8月24日(水)09:15

Bishal Cement Industries Pvt. Ltd.社
Mr. Jayandra Chudal (Executive Director)
Nepal
 
 
63fij5m6ppb6b2su4a49-09df66c6.jpgHIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。
今回、ネパールでセメント製造販売企業を営む参加者にお話しをうかがいました。
 
 

-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。
 
ビシャール・セメント・インダストリーズ社はネパールで主にOPC(普通ポルトランドセメント)およびPPC(ポルトランドポゾランセメント)の製造販売に従事する会社で、4つのブランドを有しています。会社は2011年に設立され、会社事務所はカトマンズにあり、工場はカトマンズから約250 kmのルパンデヒ郡バイラワにありますが、それは幸運にも釈迦生誕の地として有名な「ルンビニ」がある地域です。生産力は1日400トン、現在の従業員数は約160名、うち約60名は常用雇用従業員、残りは間接雇用(臨時)従業員です。
 
-会社を経営していく上で、どのような事を特に大切にされていますか。理念や方針など、大切にしていることを教えて下さい。
 
我が社の主な経営理念は、従業員が全面的に関与し一丸となって会社を発展させていくような会社をつくり上げることです。事実、従業員は会社の資産であり、我が社が彼らと関わりをもつ際には常に敬意をもって接し、いつも彼らの文化や心情を尊重するべきだと確信しています。我が社の従業員は皆、職場であれ他の場所であれどんな時も高い水準で誠実さと正直さを保つことを、私は常に強調してきました。そしてこれが事業発展を促進し会社のブランドイメージを構築することになります。私が従業員にいつも指導するもう1つの重要な点は、消費者が住居や事務所のインフラを整備するために行う投資が十分強固なものとなるように、製品の高い品質を維持することです。
  
-自社事業を更に発展・成長して行く上で、成長の妨げとなっている課題はありますか?またその“課題”に対し、どのような手を打つべきとお考えですか?
 
我が社の事業が成長するうえで直面する主な課題は未整備なインフラと電力危機に伴う不健全な市場競争です。ネパールは内陸国であるため近隣諸国から原材料を輸入するのが困難であり、このことが結果的に製造費を増加させているのです。
 
これらの課題を克服するためには、以下の対策が考えられます。
 
セメント製造協会(CMA)会員の何社かはすでに上で述べたような問題の犠牲となっているため、CMAに実情を強く主張していくことです。現在、私もCMAの役員の1人なのです。
CMAを通じて政府に請願し、道路やその他のインフラを整備すれば、セメントの原材料の豊富な供給源へと繋がります。電力危機に関しては、政府は今後2、3年でこれを克服するための積極的な計画に着手しています。商業生産が早期に生み出されるよう、現在の水力発電計画が促進されるべきです。 

-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。
 
 現在、我が社の販売は国内に限定されています。しかし長期的には我が社の粉砕機の生産性を向上させ、クリンカ製造に参入する計画です。この計画が実行されれば、インドや中国といった近隣諸国へ我が社製品を輸出するあらゆる可能性を探ることとなるでしょう。
最近では特に中国、インド、アフリカ諸国の世界的企業において、将来的にネパールへ額にして20億米ドルの投資について承認を得たところもあります。これはネパール以外への輸出同様、国内の要求に応じて供給するのが目的です。また我が社は、国内市場における我が社の存在感を強め輸出の機会を切り開くという目的のために、我が社の粉砕機に投資し、生産能力や技術を向上してくれる外国のパートナーを迎え入れるのを心待ちにしています。
  
-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。
 

 最近ではネパールに多数のセメント会社が設立され、50社余りの小・中・大規模の企業がネパールで事業を営んでいます。この業界における主要企業の市場占有率は最大10~15%で、我が社の占有率は現在、およそ2%ですが、今後1年間でこれを2倍にまで伸ばすことを目標としています。セメント量が何倍にも増加することを期待しています。ネパールはかつて、政情不安定または一貫性のない外交政策のため、あまり発展がみられませんでした。その結果、インフラ未整備やセメント会社に求められていた開発の不足を招いたのです。ネパールは現在、水力発電計画、道路やその他の主要インフラの開発または完備に本腰を入れて取り組んでいるところです。
上述したように、多くのセメント会社が存続をかけて競争しており、非常に不健全な競争環境に陥っています。もう1つの弱点は消費者物価を統制するシステムがないことです。これもまた、さらなる不健全な競争を作り出す一端を担ってしまっています。
現地投資家にとっては、新規参入企業を立ち上げるのは容易なことです。しかし、外国投資家にとっては、現時点でさまざまな認可手続きを経なければならず、少々厄介です。政府はこういった事柄に真剣に取り組み、単一窓口政策を立ち上げようとしています。
 
 -日本を含め、他国と自国における商慣習には違いがあると思います。自国での働き方に関する考え方、業務文化、国民性など、他国との際立った違いがあればご紹介ください。
 
 ネパールにおける管理手法は今もなお伝統的な形式で行われることが多いです。多くの企業組織が家族経営であるため、専門的な管理システムが備わっていません。企業文化を培うことができないのです。官庁での管理手法は官僚主義制度の影響を受けます。公務員は国民にサービスを提供する一方で、規則、条例、手続き、および法的形式に不要と思えるほど重きをおいています。そして責任回避のため、政府の規則や政策について、時には異なった見解を述べる傾向があります。しかし、銀行、保険会社、ホテル、航空会社、通信会社、合弁会社、および多国籍企業などには競争環境の発展のため、現代的な管理システムを導入している企業もあります。以下に挙げるのはネパールの組織で一般的にみられる手法です。

[計画の手法]

ネパール企業が計画を立てる際は昔ながらの伝統に依拠します。多くの経営者は計画を作成するのに過去の功績や信頼できるデータを検討しません。彼らは自分の直感と判断を基に計画を作成します。環境への影響を分析せずに作成された計画は、短期目標を達成するためだけのものです。SWOT分析は検討されません。ネパールの組織が抱える主な問題は計画の実行です。計画を作成するのは最高幹部クラスの経営陣であり、部下の意見や提案は加味されません。よって部下には、こういった計画の実行の責任感が欠けています。さらに、業務の進捗状況の管理や評価はほとんど重要視されていません。しかし、多国籍企業の参入とネパールの世界貿易機関への参加によって、ネパールの経営者は現実的な計画を作成し効果的に実行せざるを得なくなっています。

[意思決定の手法]

多くのネパールの組織では意思決定の手法は中央集権化されています。決定を下すのは最高幹部クラスの経営陣であり、そこに部下は参加しません。最高幹部クラスの経営者は意思決定の権限を部下レベルに委ねたくないのです。たとえ部下が優秀で誠実であったとしても、彼らを信頼していないかのようです。部下は適切な指示や指導がないまま決定を実行するよう強要されます。一般的に民間組織では、家族からの圧力に基づいて決定が下されるのに対し、政府組織では政治的圧力に基づいて決定されます。意思決定のために量的手段をとることは実践ではほとんどみられません。意思決定のプロセスでは、組織の利益よりもむしろ個人の利益を実現することがより重要視されがちです。多くの経営者は適時に決定を下すことはありません。彼らが決定するのは急を要する時のみです。政府組織では問題解決のために委員会を結成しますが、委員会が薦めることはめったに実行されません。しかし、ビジネスにおける競争環境の発展と共に、決定における質的・量的側面の両方を考慮し始めた民間企業経営者も出てきています。彼らは可能な限り合理的な決定をしようと努めています。

[組織化の手法]

ネパールの組織の多くは伝統的な縦型組織構造となっています。開発計画において、マトリックス構造もまた実践されています。組織構造は機能ごとに異なる部門に分割されます。業務区分はありますが、権限と責任は明確に定められていません。権限は極めて一元化されています。権限の委譲が不適切であるため意思決定は遅れます。メンバー間に結果に対する説明責任が欠如しているため、組織の資源や取り組みを無駄に消耗しています。チームワークとグループの取り組みという概念は発展しません。他部門のメンバー同士は適切な連携がとれていません。しかし、合弁会社や多国籍企業の参入でネパールにおける組織化の手法は変化、改善されつつあります。

[人的資源管理の手法]

ネパールにおける人的資源管理の手法は昔ながらの形式をとっています。多くの組織では今も人的資源計画を作成しません。必要な労働人員数は過去の経験を基に、またはその場しのぎで検討されます。多くの組織には、業務分析または業務内容に関する適切なシステムが存在していません。
 
民間組織では主に身内や友人から人員を補充します。企業では従業員募集の広告を出すシステムがありますが、採用の際に重要視されるのは照会状と推薦状です。官庁では、公益事業委員会が欠員補充のあることを公示します。筆記試験と面接によって従業員を選びます。しかし公営企業では、最高幹部クラスの経営陣は政治的イデオロギーに基づき任命されます。同様に、下位レベルの従業員もまた政治的圧力を経て選任されます。
 
多くの組織では、一般的に経験、関心、およびスキルは考慮されずに、従業員は職場に配置されます。しかし、企業組織では適材適所の概念が実践されています。同様に、人的資源のスキル開発は重要視されていません。研修、講習会、セミナー等の開発プログラムはめったに企画されないのです。
 
勤務評価の科学的手法は適正に採り入れられていません。従業員の査定はマネージャーの判断と推薦次第です。

[リーダーシップの手法]

ネパールの多くの組織では独裁的リーダーシップ型が慣習となっています。権限が一元化された構造をもつシステムです。最高幹部クラスの経営者は部下の効率性やスキルというものを信用していません。意思決定権を下位レベルに委譲することはありません。よって、従業員間にモチベーションが欠如しているのです。
 
民間組織では、家族が事業を運営するため、権限と管理が極めて一元化されています。彼らは従業員に意思決定権を与えてきませんでした。公営企業ではリーダーシップの形態は政治機構の影響を受けます。連携、双方向コミュニケーションのあるチームワーク、およびグループの取り組みに欠けています。政府が変われば最高幹部クラスの経営陣も変わります。したがって、マネージャーは組織の目標達成に対し実行責任も結果責任も感じません。ネパールの官庁は官僚主義的構造になっているため、意思決定権は最高幹部クラスに一元化されています。下位レベルの従業員は最高幹部クラスの権限者が下した決定を実行することにのみ責任があります。しかし、合弁会社として設立された企業や多国籍企業は、ある程度参加型管理を重要視してきました。意思決定と問題解決プロセスに部下を参加させています。また、組織の目標達成に向けて、チームワークやグループの取り組みを重要視しています。

[統制の手法]

ネパールでは多くの経営者が統制について昔ながらの認識をもっています。彼らは統括を、従業員に脅威を示し罰則を科す手段ととらえています。統制のメカニズムは計画に基づいてはいません。合理的な基準を設定したり、あらかじめ決められた基準に照らして実際の業績を評価したりすることはめったにありません。官庁では年間予算は統制に先立つとみなされる一方、期末監査は財務統制とみなされます。損益分岐点(BEP)、プログラム評価・検討手法(PERT)、キャリア管理プログラム(CMP)、および比率分析といった現代的統制手段はほとんど適用されていません。統制前よりも統制後を重要視しているのです。マネージャーは品質管理に対しては真剣になりません。権限が極めて一元化された構造であるため、統制は最高幹部の責任であると考えているのです。経営監査と業績監査は実践されていません。


-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?
  
多くの民間会社が会社の人的資源を軽視してきたため、これは常に大きな課題でした。最近この分野で多くのコンサルティング会社が参入しており、民間会社に対し事業の成功における人的資源の重要性を説こうと腐心し、最近順調に功を奏しています。
私がチームに対して取り組んでいるのはさまざまな参加プログラムを通じて所属意識をつくり上げることです。たとえば、組織に対する目標を共有しそれについて声高に対話する、企業文化を基盤に業績を発展させる、人材プログラムを定着させる、たとえチームの成功が小さくても業績に応じ報酬制度をもってたたえる、といったことをしています。また会社のためにふさわしい人材を募り研修の機会を提供する目的で、コンサルティング会社を利用しています。
 
 
-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。
 
今回の企業訪問を通じて、様々な成功しているビジネスコンセプトや、先を見据えた戦略を学ぶことができ、日本や日本企業に対してとてもよい印象を持ちました。特に印象に残ったこと、環境やCSRについて学んだことの一例は以下の通りです。
 
・ビジネス戦略としての「三“新”」コンセプト:新製品の製造、新市場・需要の創造と新しいアプリケーションの構築
・環境保全とリサイクルによる製品の意図的でない使用防止(企業の環境へのアプローチと企業による価値創造の統合)
・使用ピーク時の電気負荷のバランス、エアコンの効率性改善方法といった省エネ改善
 
日本人について好きなところは、彼らは未来志向であることです。日本人は限られた資源を活用し、また環境保全、衛生面を配慮し、品質技能に自信を持っています。全体的に見て、今回の訪問はとても良い経験となり、多くのことを学ぶことができました。
 
日本滞在中に最も驚いたことは、建物内の限られたスペースですべての機能を併せ持つという活用の仕方でした。HIDA研修センターの部屋も同じです。
次に驚いたことは、日本人の持つ完璧な「おもてなし文化」や人々への敬意、さらには時間を守る几帳面さです。三番目としては、日本人の食生活と環境からくる、健康を意識した長寿生活です。最後に、最新の各種管理ツールを活用した各分野におけるコストイノベーションと経費管理にも驚きました。


ご協力ありがとうございました。
 

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