経営者インタビュー

『日本人の「良いものを作りたい」という熱意に打たれた』 ~日本の皮革製品製造・販売企業のエチオピア現地法人チームリーダーに聞く

2017年7月7日(金)10:00

Hiroki Addis Manufacturing S.C.
Mr. Daniel Mulugeta W Meskel (Bag Manufacturing Team Leader)
Ethiopia

Mr.-DANIEL-MULUGETA-W-MESKEL AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 株式会社ヒロキ(本社:神奈川県横浜市)は1960年に設立され、皮革・毛皮衣料・服飾・バッグ・財布・革小物等、オリジナルブランドのデザイン製造・販売及び同商品の輸入・販売等を事業とされています。2014年には日本企業として初めて、エチオピアに現地法人Hiroki Addis Manufacturing S.C.を設立されました。同社は現地法人設立後、AOTSの専門家派遣制度を用い、これまでに数人の専門家を現地従業員のトレーニングのため派遣されています。
 今回、この現地法人Hiroki Addis Manufacturing S.C.よりAOTSの経営者向け研修プログラムに参加された、日本人の専門家より指導を受けたバッグ製作チームのチームリーダーにお話をうかがいました。

株式会社ヒロキ経営陣のインタビュー記事はこちら>>>


-まず初めに、貴社の企業概要についてご紹介ください (事業分野、設立年、事業規模、従業員数、主力製品/サービス等)。

 Hiroki Addis Manufacturing S.C.は株式会社ヒロキのエチオピア現地法人で、2014年に設立されました。日本人3名と20名の現地従業員を擁する企業です。革製品の加工工場にて、エチオピア産の羊や山羊の革を利用し、現地の材料、現地の従業員で現地生産を行っています。主力製品は通常の皮革面とスエード面でリバーシブルの衣料、およびバッグです。

-貴社におけるあなたの職位、職責、またエチオピア人従業員の中での職階を教えてください。

 工場ではエチオピア人の工場長1名の下にバッグ製作チームと衣料品(ガーメント)製作チームがあり、私はバッグ製作チームのチームリーダーを務めています。エチオピア人従業員の中ではNo.2のポジションにあたります。生産管理が主な職務ですが、革なめし工場から仕入れる革の検品や、仕上がった製品の検品まで行っており、何か問題が起こればチームの皆で解決できるようチームをリードしていきます。また、新型のバッグ生産をスタートする際、型紙を起こし、型紙に基づいたサンプルを作成することも重要な職務の一つです。私は皮革加工の専門学校を卒業し、当社に入社した一期生で、入社した時点で(AOTSの専門家派遣制度により㈱ヒロキ本社より派遣された)山村専門家がいらっしゃり、その指導を受けました。
 
-株式会社ヒロキ本社から派遣された専門家の方々が貴社にて指導を行っている間、どのようなことを学びましたか。

 私が入社したのは、当社の設立まもなくのことでした。私を含め、皮革加工専門学校の卒業生が主に雇用されていましたが、実地経験は不足していましたので、生産を実際に始める前に指導を受ける必要がありました。そのため、入社から3か月の間は山村専門家の指導によるトレーニングのみに集中しました。山村専門家はいつも私に寄り添い、技術を惜しみなく教えてくださいました。私が山村専門家から学んだことは、私を通して他のエチオピア従業員に伝えることになっていましたので、単に技術そのものだけではなく、どのようにその技術を伝えるか、つまりトレーニングの方法についても学びました。また、何か生産で問題が起こった際にどのように対応するか、という危機管理についても教えていただきました。

 山村専門家を含め、これまで㈱ヒロキ本社から3名の専門家がいらっしゃいました。彼らのアドバイスにより、従業員たちは革製品加工や縫製の基本的なスキルを身に付けることができましたし、専門家の方々の帰国後もそのレベルは保たれています。専門家の方々にも、私たちにトレーニングを行ったりアドバイスをしたりする際、難しいところもあったかと思いますが、それでも常に前向きに私たちをリードしてくださいました。それが現在の従業員のスキルアップにつながっていると思います。

-日系企業に入社し、また日本人専門家から指導を受け、ご自身で経験された変化や改善がありましたら教えてください。

 Hiroki Addis Manufacturing S.C.に入社する以前、他社でアルバイトをしたことがあり、その際にエチオピアの一般的な職場や労働文化にふれました。そこでの経験と比較すると、日系企業であるHiroki Addis Manufacturing S.C.では、時間通りに出社することや、品質を犠牲にして生産数を増やそうとするのではなく、少数生産になっても品質を重視して責任をもって製品を製作する、という点が異なるという印象を持ちました。また、私が経験した個人的な変化としては、勤務外の時間、例えば家に帰ってからも仕事のことを考えるようになったことが挙げられます。現地企業でアルバイトをしていた際には、勤務外の時間に仕事のことを考えたことはありませんでした。Hiroki Addis Manufacturing S.C.に入社して以来、日本人の「良いものを作りたい」という熱意に打たれ、それに応えたいという気持ちが高まりました。その結果、家に帰ってからも、どのように業務を進めていけば品質の高い良品が作れるのか、と考えるようになりました。

 専門家の皆様については、コミュニケーションを取る際、仕事についてはとても厳しいものの、まるで家族、例えば父親や母親のように話をしてくださいました。専門家の皆様がそのように暖かく接してくれましたので、いつでも、どのようなことでも質問することができました。それが仕事に対するモチベーションのアップと、クオリティの向上につながったと思います。

-日本人の専門家による指導を経て、売上や製品生産数の増加等、貴社に前向きな変化はありましたか。もしありましたら教えてください。

 生産性が高まったことは言うまでもありませんが、技術や品質も向上しました。例えば一か月ごとに製作できるバッグの数は、40から70、さらに120に増加しました。専門家の方々の熱意ある指導を受け、私も含め現地の従業員が皆、それに応えたいと思うようになったのです。さらにその後、現地従業員自身の教えられたことを理解するスピードも上がりました。また製品の種類も増加しました。

 専門家の方々が私たちに指導してくださった後に入社した現地従業員に対しては、直接指導を受けた先輩社員である私たちが指導を行いました。専門家の方々から教わった、良いものを作りたいという情熱もそのまま新入社員たちに伝えられたと思います。

-どのような背景や理由により、貴社は従業員のアフリカものづくり管理研修コース(AFPM)への参加を決定されたのでしょうか?

 私はHiroki Addis Manufacturing S.C.の設立当時から在籍していますし、工場長の補佐、バッグ製作チームのチームリーダーとして他の従業員を取りまとめ、今後もリードしていくという重要な立場を任せていただいています。そのため、この度Hiroki Addis Manufacturing S.C.から日本での研修に派遣されたことに対し、大きな責任を感じています。

 今回の研修ではトヨタ等の日本企業を訪問し、実際に問題の解決方法、5Sやカイゼンが行われているところを目の当たりにし、日本では実際にここまで徹底しているのだと思い感銘を受けました。当社は日系企業であり、カイゼン等について知識はありましたが、まだまだ実行できていない点が多々あるということが認識できました。エチオピアにはエチオピアカイゼン機構(Ethiopian Kaizen Institute: EKI)※があり、そこでカイゼンのコンサルタントとして訓練を受けたエチオピア人にカイゼンについて教えてもらったことはありましたが、カイゼンの本場である日本人から日本で直接学べたことが有意義であり、喜ばしいことでした。

-AFPMコース参加により得た成果を、帰国後どのように活かしていきたいとお考えですか?

 日本に来る以前は5Sを十分に運用できていなかったところがあると思います。例えば、革を裁断した際にその時点では使用しない余りの部分(断ち落とし)や金具(ファスナー等)は、色をつけて分けておけば、いずれ他の製品の製作等に使用したい時が来た場合、すぐに持ち出して適切な製品に使用できます。また、道具の置き方についても、現時点では色々な異なる種類のものが同じ棚に収納されています。それらを穴の大きさを基準に置き方を決めてうまく整理すれば、より使いやすくなります。帰国後は、日本で5Sやカイゼンを実際に目にしたことによって生まれたこうしたアイデアを実行に移していきたいと考えています。

 また、今回のコースで訪問した見学先企業において、従業員同士のコミュニケーションが円滑に行われているように見受けられました。当社もこの従業員間のコミュニケーションの質という点を向上させていきたいと思います。それにより、製品トラブルが避けられるというメリットがあります。挨拶の励行はよい見本でしたので取り入れたいと考えています。

 製造工程についても学ぶことが多々ありました。当社ではこれまで検品を生産の最終段階で行っていましたが、このタイミングで検品すると、何か問題があった場合に初めから作り直しになってしまいます。それに対し、この度の日本滞在中、一工程ずつ検査していくことを学びました。帰国したら早速試したいと考えています。

 専門家の方々およびAOTSの研修コースでの講師の方々に熱心に指導していただき、非常に感銘を受けました。その気持ちに応え、私も同じように熱意をもって、エチオピア人従業員たちに指導していただいた内容を伝えていきたいと考えています。

※エチオピアカイゼン機構:エチオピアの元メレス・ゼナウィ首相の意向を受け、エチオピア政府により2011年に設立された機構。日本のカイゼンをエチオピア企業に指導できるコンサルタントの育成を行っている。

ありがとうございました。

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